現代の名工
表具師 森谷 武竝
表具師であった父の勧めで、東京都の表具店に住み込みで修業することになった。4年間の修業の後、群馬県に戻り、東雲堂表具店の2代目として事業を継承した。当時は技を盗んで覚える時代であり、現場で働く職人の手の動きなどを観察して、技を身に付けていった。一人前になるまでは苦労したが、今ではその経験が糧になっており、困難な状況に直面しても冷静に対応できるようになったという。掛軸の修復は、裏打ち紙を指の腹でさすって、集めるように剥がす慎重な作業が要求される。失敗できない仕事であるが、程よい緊張感の中で仕事できるところに、表具の仕事の楽しさがある
創作表具
現代の和室や洋室に合わせて飾りやすくした「創作表具」の製作を得意としている。伝統的な表具は、各部分の寸法や形がある程度決まっているが、創作表具は、決められた型や素材に囚われず、飾る場所を実際に見学し、現場に合うように設計・製作する。具体的には、天地や一文字の長さを変える、柱の形を三角形状に突出させるなど、基本を大切にしつつ、飾る場所に合わせた工夫を凝らして製作している。
著名な書家の作品の修復作業
草津片岡鶴太郎美術館の顧問を務めており、美術館のレイアウト指導や作品の仕立てを行っている。写真は、襖に書かれた鶴太郎氏の作品を剥がして、染み抜き作業を行い、屏風として仕立てた作品である。また、長野原町教育委員会より依頼があり、書家・金澤翔子氏の作品の修復作業を行った。森谷さんの仕立てた作品は、現在も長野原町役場に展示されている。その他にも、地元の神社や寺院所蔵の歴史的価値が高い掛軸の修復にも携わっている。
後進指導育成
前橋高等職業訓練校(内装仕上げ施工科)や西吾妻地区高等職業訓練校(現在休校中)の指導員として、訓練生の指導にあたっている。また、表装職種の県技能検定委員を務めており、技能検定に使用する3分の1サイズの模型(写真)を全て手作りで製作している。
若手技能者に向けてのメッセージ
厳しい道ではあるが、よい仕事をしながら、目で見て実際にやりたいと感じてくれる人がいれば嬉しい。